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夢ならいつまでも2人きりなのに

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舞台「孤島の鬼」を振り返って感想

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孤島の鬼、再演?決定おめでとうございます!演出が変わるようなので再演ではないかな?とても思い出深い作品なので、またこうやって劇場で見られることが嬉しいです。

孤島の話はそのうちここにも残したいと思っていたので、ちょうどいい機会なので第四弾の「孤島の鬼」について書こうと思います。

 

ネルケプランニングの昭和文学シリーズ第四弾「孤島の鬼」。江戸川乱歩の同タイトルの小説を舞台化したもので、2015年4~5月に赤坂レッドシアターで上演されました。公演開始直後にはまだまだあった空席が、期間中に口コミで評判が広まり、千秋楽にはGWにも関わらず補助席まで満員になった作品です。公演が終わってからもいろんなところでステマされ続け、崎山くんの刀ミュ出演や鯨井くんのペダステ出演をきっかけ(多分)にネルケオンラインの在庫が一時的に無くなったりもしました。

当時この作品に出会えて本当によかったと思います。舞台は生で見てこそ、というのはどの作品にも言えることですが、特にこの作品はあの時あの場所でしか味わえない空気というものが強くありました。レッドシアターの階段を上がって外に出ると、六道の辻を抜けたような、そんな気持ちになるんです。劇場全体が独特な空気を持った、本当に不思議な作品でした。

感想とタイトルをつけましたが、今回は作品の内容についての説明は省略します。というか、この作品をうまく説明できる気がしないんです。あらすじなんかは公式をご覧いただければと思います。ここには、その空間や感じたことに重きを置いた私の手記として残したいと思います。

 

初日。劇場に入ると客席が異常に静かでした。

舞台上には異様な雰囲気の舞台装置、スモーク、4月にしては暗くて寒々しいシンとした空気。そして何より、誰ひとり喋らない。初日の緊張感から来るものかと思ったら、いつもなんです。開演前に話している人がいたのは全16公演中たったの1公演だけでした。確かに1人で見に来ている人は多かったけれど、友達同士で来てる人だって絶対いるのに誰も喋らない。

開演前から会場全体が作品の空気に飲み込まれているような…こんな経験は初めてでした。私はこの空気が大好きでした。これについては是非アフタートークのゲストだった松野高志くん改め劉高志くんのブログを読んでください。(ありがとうございました。|松野高志オフィシャルブログ Powered by Ameba)

 

この作品は、セットや照明や音楽が怪しく美しい空間を作り上げていました。ビーカーやホルマリン漬けの何かが並んだ可動式の棚、右上の方にある水槽には実際に本物の金魚が泳いでいて、左下の方にある砂の入った水槽はあるタイミングで中にいるネズミが移動する仕掛けがされていました。確か壺のシーンあたりだったかな。

それらのセットが照らし出されると、怪しく幻想的な空気がより強くなって…特に前方席に座っていると、自分もその光に包まれて、なんとも不思議な高揚感がありました。照明の紀大輔さんは、この作品で日本照明家協会賞 舞台部門新人賞を受賞しています。(公益社団法人 日本照明家協会|協会の事業|協会賞|協会賞授賞者一覧表(舞台部門))

 

ビスケのカメラワークはなかなかに素晴らしいのですが、それでもDVDに映っていなかった(ような気がする)画面の外側、1年半たった今でも私が覚えているものをいくつかメモしておこうと思います。

友之助が壺に入るシーン。蓑浦と「私」が驚きを隠せないのに対して、諸戸の感情を抑える演技が目を引くシーンでした。自分の推理が正しいことが証明されていくところを目にして、その興奮を必死で抑えて平静を保とうとするような表情をしているんです。最初は友之助が壺に入ろうとするのを食い入るように見つめていて、壺に入っていくにつれて目が輝いていく。でもここで騒いで失敗してはいけない、まだ聞かなくてはならないことがある、そんなふうに見えました。

あとは、「私」が秀ちゃんと仲良くしているのを吉ちゃんに見せびらかすシーン。この時、蓑浦と地図を見ていた諸戸が視線を上げて「私」を見ます。2人の仲を見せつけられて嫉妬しているのは吉ちゃんだけではありませんでした。「私」を見る諸戸をどうしたのかと見る蓑浦、それに気付いた諸戸は何でもないよとでもいうように笑顔で応えます。

そして、諸戸が蓑浦に右手を右側の壁につくよう言う六道の辻のシーン。それを聞いた「私」も先程まで座っていた箱に右手で触れます。その後諸戸と蓑浦は歩き始めますが、そんな2人を見ている「私」の手は、まだ2人が歩いている途中で箱に触れるのをやめてしまいます。力が抜けてぶらんと垂れ下がる手は、助かることを諦めたように見えました。

  

DVDに無いといえば、この作品には休演日を挟んで追加された、DVDに収録されていない台詞があります。今思うと明確に書き残しておけばよかったと思うのですが、当時はなんというかいっぱいいっぱいでそこまで頭が回りませんでした。台詞だけでなく演技自体も後半どんどん深まった作品だったので、折角ならもっと後半に収録して欲しかったなあと思います。

最後の「私」の語りのシーン。秀ちゃんが4億の遺産を手に入れたことを説明したあと「今では私たち2人の共有財産です」というような台詞が追加されました。原作にはもともと記載があるのですが、公演開始当時の台詞にはなかったものです。今まで言わなかった共有財産という単語を「私」が突然言うようになったこと。もともと私が抱いていた諸戸の肩を持ちたくなる気持ちを更に複雑化させました。

 

集中と緊張で思わず手を握りしめて見ていました。あっという間の2時間15分、演じる側も見ている側も全神経をフルに使っていて、終わったあとにくる充実感と疲労感はすごいものがありました。最初は本当に言葉が出なくてまさに放心状態で、もともと無い語彙が更に無くなって、すごい…しか言えなくて。複雑な感情を後に引きずるような、劇場から階段を上って地上に出てやっと解放されるような、そんな感覚でした。

見に来てくれた友達は「すごく良かったけど通うのはきつい」と言いました。私も初日はちょっと不安でした。でも段々と、この緊張感と終わったあとの心地よい疲労感が癖になっていって…本当に苦しくて辛くて幸せな不思議な日々でした。

 

第五弾のキャストが発表されましたね。

パッと見てまず思うのは、第四弾よりも一人少ない。それはつまり、恐らくそういうことでなのでしょう。そして、第四弾で脚本を担当された石井幸一さんが第五弾では脚本演出両方を担当されます。同脚本別演出…になるのかは分かりませんが、これはもしかしたら同じようで全く違うものが見られるのではないかという感じがします。個人的には平井浩基くんが同じ役なのか違う役なのかとても興味があります。

正直、大切な思い出すぎて大事に大事に取っておいた結果、なんだか記憶を美化しているような気がして、再演があったとしても過去の記憶を超えられるのか不安だなあなんてずっと思っていました。DVDもほとんど見ていないんです。でも、なんだか新しい孤島の鬼を見られそうでワクワクします。第五弾も見に行こうと思います。

さて、何か言い忘れた事はないかしら。迷ったらとりあえず見てください。きっと後悔しないですから。